釜山は隣町の金海まで都市鉄道で行くことができる。距離によって運賃が異なるのではなく、1,200ウォンあれば釜山の端から端まで、金海と梁山まで行くことができる。それも座って行ければ感動的な旅になる。金海行きの軽電鉄はスカイトレイン。窓の外の風景を存分に楽しめる。線路がカーブして車両のボディを見ていると、改めて電車の旅をしている気分になる。だから、金海に行くときはスマートフォンから目を離して視線を窓の外において。洛東江や江西区の耕作地、金海に入ると次々と見えてくる伽倻文化の時間旅行。慶州が新羅なら、金海は伽倻だ。
首露王陵駅で下車し、ショッピング街を過ぎて10分ほど歩くと首露王陵が見える。金官伽倻の始祖・金首露の墓がある場所だ。卵から生まれ、阿踰陀国(インド)から来た王女と結婚した。多文化家庭の元祖だ。韓国で一番多い苗字で全国に400万人いる金海金氏の始祖だから、それはそれはものすごい大家族。王陵には結構大きな墓と庭園がある。墓よりもこの庭園のほうが見所。それも秋でなければならない。秋は首露王陵に来るべきだ。卵から生まれた王様には簡単に挨拶だけする。陵の両側には石室がある。ここには殉葬された遺体と一緒に副葬品が埋葬されていたが、日本統治時代に盗掘された。守ることができず心だけが痛い。そして、王陵裏側の庭園を歩いていく。落ち葉を踏みしめながらのんびり歩き、ベンチに座って一冊の詩集を広げてみよう。今いる場所の美しさに、改めて気づくようになる。友人や知人が一緒なら、この庭園に座らせて心を込めて写真を撮ってあげて。風景が素晴らしいので、どう撮ってもグラビアみたいな仕上がりになる。
博物館駅で下車して国立金海博物館に行く。ここは午後9時まで夜間も開館している。ありきたりのデートにうんざりしているのなら、博物館に行くのも良い選択だ。都市鉄道に乗れば、国立金海博物館まではすぐ。行き方は簡単で、行ったことのある人ならわかるだろうが、国立博物館はものすごく施設がいい。夏は涼しく、冬は暖かい。国立金海博物館は伽倻文化遺産が一杯で、教科書に出ていた新羅の遺物よりもたくさんあって美しい。よく見ると、現代のアクセサリーのような遺物も多い。
卵から生まれた金首露王の物語を憶えている人は、卵が空から降ってきた場所へ行ってみて。西暦42年、空から6個の卵が降りてきて光を発し、最初に割れた卵から出てきた人が金首露だった。金首露陵と王妃陵は徒歩10分と少し離れていて、その間に亀旨峰がある。緩やかな散歩コースがある公園だ。亀10頭が固まっている形だというが、それはよく分からない。文学書に出てくる'亀旨歌'が誕生した場所でもある。「亀よ亀よ頭を出せ、出さなければ焼いて食べるぞ」という、とにかくそんな歌。亀旨峰の頂にはなんと支石墓がある。手を伸ばせば触れることもできた。紀元前4~5世紀頃のある酋長の墓と推定されているが、卵から出てきた話より、支石墓のほうが興味深い。朝鮮時代中期の書道家・韓石峯が墓の一番上の石に'亀旨峰石'と書いたという説があるからだ。刻まれた文字はまだ鮮明で、腰を曲げると間近で見ることができる。これが名筆と言われる筆跡か、吟味する時間だ。
さらに10分ぐらい歩くと、巨大な文化会館が見える。金海文化の殿堂だ。殿堂の中にある映像メディアセンターでは、毎週水曜日夜に無料映画を、土曜日は家族一緒に楽しめる映画やアニメを無料で上映する。ビデオスタジオ、オーディオ録音スタジオ、映像スタジオ、マルチメディア教室、視聴覚室は有料でレンタルできる。立派な施設で、金海のメディアセンターの役割を果たしているわけだ。映画製作に必要な撮影機器ももちろんレンタルできる。スタジオや録音スタジオなどの使い方は、毎学期の講座で教えてくれる。 ここにはスケートリンクもある。未来のキム・ヨナを夢見てスケートレッスンを受ける子供たちの姿がある。学校の休み期間が始まると、スケートリンクは小学生やカップルで埋まる。転んだら手をつかんで起こす光景があちこちで見られる。けれども、スケートは一人で滑るとうまくなるのは確かだ。
最後は蓮池公園。その名の通りこの公園には、釜山でめったに見られない蓮の池がある公園。夏になると多くの蓮の花が咲く。きれいに整備された公園で、金海に住んでいる誰もが公園の遊歩道が最高とほめる。蓮の花が華やかに咲く池の中央には木の橋が長く伸びていて、噴水が涼しげに噴き出す。どの位置に立って写真を撮ってもいいアングルだ。夏の夜は公園を静かに歩くと、カエルやコオロギの鳴き声がうるさいほど。昔はどこにでもいたカエルも、蓮池公園まで行かないと見られなくなった。きらびやかな伽倻の遺跡を見て、博物館の後はスケートリンクまで行くコースなんて、そうあるわけない。金海ならできるのだ。