中央洞は'元都心'とも呼ばれている。釜山が都市の仲間入りをした頃、ここが中心だったからだ。埠頭に面した中央洞には国際船が行き交うターミナルがあり、観光客とロシアの船員たちがここで降りる。彼らは中央洞から元都心の外に向かい、地元の人は元都心に向かって中央洞や南浦洞を歩く。船は鉄道よりも歴史のある交通手段だ。外国人が最初に釜山の地を踏んだのも中央洞。
ここには今もたくさんの貿易会社と印刷所が集まっている。正午になると、中央洞の街は昼食のために外に出た会社員たちで混雑する。ここは、どこに入っても安くて美味しい食事ができることで知られている。美味しくなければ噂が広まって中央洞では長続きしないからだ。いくつもの狭い路地が集まる飲食街にはあらゆる店があり、手軽に焼酎やお酒が飲める小さな居酒屋も見逃せない。
40階段は中央洞の真ん中にある。中央駅からビル街を抜け、40段の階段を上がれば印刷通りに出る。二つの通りをつなぐのがこの40階段だが、この階段が有名になったのは映画<情け容赦なし>のロケ地になってからだ。朝鮮戦争以後、この階段は商業地の中心だった。火事で焼けてしまう前の昔の釜山駅に行く通路だったからだ。韓国のテレビ番組<ランニングマン>のロケ地に使われてから、観光客がまた少し増えた。番組で出演者が階段から靴を投げる遊びに興じたことが受けたようだ。<ランニングマン>を見た人なら憶えているだろう。
階段の上にある印刷通りは壁画通りでもある。デジタル印刷が導入される前は、印刷所ごとに機械に活字をはめ込む技術者がいた。1ページ印刷するたびに、文字が刻まれた小さな金属片を一つの版にはめ込む作業だ。正確にページを刷り出すスピードが速いほどベテランだ。彼らがいなくなった後も印刷通りは活気があり、毎日数万冊の本を印刷する。インクの匂いがじわっと漂い、印刷機の回る音が途絶えることのない通りの壁画もなかなかの見所。
印刷通りを龍頭山方向に抜けて、少し歩けばすぐに近代歴史館が見える。南浦洞コースでもチャガルチコースでも釜山近代歴史館は外せない。この周辺で公衆トイレを探すのは難しいが、近代歴史館ならロビーを通らなくても公衆トイレの入口が別にあるので便利。釜山で生まれて他の土地に移り住み、また戻って来たお年寄りにとって近代歴史館は特別な場所だ。昔の町の姿が館内でひっそりと再現されているからだ。数少ない貴重な近代の史料や写真も展示されていて、釜山の市街地の写真も見ることができる。
中央洞、南浦洞、宝水洞は道一本を隔てる隣町同士。歴史館から宝水洞本屋通りに行くのは簡単だ。古本屋街として何十年間も続いているここは、平日も週末も本を探す人が絶えない。古本を選ぶ人は慎重に本棚の下に隠れていた絶版本を探す。新刊を割引価格で買うこともできる。再販を重ねたベストセラーと参考書なら、この通り一つで全て手に入れることができる。保存状態が良い本でも新刊の半額で買える。数十年前、高校生たちは親から参考書を買うお金をもらうと、ここで全く同じ参考書を買って残りのお金でおやつを買う、なんてこともした。
コースの終わりは臨時首都記念館。中央洞で地下鉄を降りて土城駅まで歩くことになる。意外に遠くない。釜山が臨時首都だった時代、すなわち朝鮮戦争のときに臨時首都として政府の役割をした場所だ。日本統治時代に建てられた近代建築様式で、李承晩大統領がここに居を構えた。西洋式家屋に日本式構造と韓国式生活空間が結集したというわけだ。かつて近くに住む学生たちは、夏の暑い時期にここに来て畳の部屋で本を読んだり、板の間で寝転んで宿題をしたりしたそうだ。つかの間の時間旅行ができる南浦洞と中央洞。異色の近代家屋で終わるこのコースは、空間の力を借りて昔の姿を見せてくれる。