早朝に食事を摂ってから出かける。1号線に体を預ける。どうにか座る場所を確保し、リップクリームをたっぷり塗る。カバンをぎゅっと抱きしめて、棒に頭をもたれかけて目をつぶる。熟睡する。1時間たっぷり眠って目を覚ますと下端駅だ。唇はうるおっている。これは、1時間目の授業のために、自宅がある長箭洞から下端の東亜大学まで4年間通っていた後輩の毎朝の行動だ。下端は文字通り端にあるからこんな地名なったのだろうか。川と海の水が交わるところだ。1号線の端のほうにある下端駅。この駅には観光スポットが洛東江に沿って無限に広がっている。長い時間1号線に乗る価値がある。
下端駅から洛東江河口堰は意外と近い。下端五差路と反対方向を出て川のそば歩くと、漢江とはまた違う洛東江が現れる。太白山の水が朝鮮半島を縦に流れて海に達する。川幅も広く景色も明るい。川の真ん中に乙淑島という島がある。川の下の方に自然にできた島で、川を渡れる橋が島の両袖にかかっている。
橋ができる前の乙淑島は葦が生い茂り、魚貝類が豊富で長旅をする渡り鳥の宿だった。白鳥や鶴は 乙淑島の葦の群生地で疲れた羽を休めて餌を食べた。鳥は暖かいところに飛んで、見知らぬ鳥の群に出会うと告げるらしい。「川の下の方に小さな島がある。ごちそうが毎日あるよ!」と。長い歳月、乙淑島は鳥たちにとって天国だった。この乙淑島に文化会館と渡り鳥の飛来地、'森'という名の小さなカフェ、生態公園とエコセンターがある。
乙淑島に行く橋を渡る前に、片隅に小さな展望台がある公園から島を眺めてみよう。この公園の遊歩道は水面よりちょっと高いだけだから、水辺を歩く気分になれる。展望台で目標地点を確かめてから乙淑島に向かう。
橋を渡った瞬間から渡り鳥の飛来地だ。公園として開発されてからは、しばらく鳥の姿が見えなかったが、多くの環境団体の努力で湿地を取り戻した。都会で一番近くまで飛んでくる渡り鳥を見ることができるようになったのだ。洛東江河口エコセンターには色々な施設がある。屋外の探鳥台でバードウォッチングができ、望遠鏡や河口の湿地の生態説明も詳しく出ている。舞い降りてくる鳥を見たり、望遠鏡を借りて湿地近くまで一部を探索できる。こんな体験は釜山で唯一ここだけ。洛東江に浮かぶ乙淑島だけだ。都市鉄道を降りてすぐの場所に湿地があるのは珍しい。エコセンターから遠くない洛東江文化館に立ち寄って、水を素材にしたメディアアート作品を鑑賞することもできる。室内キッズプレイルームもあるので、家族一緒に訪れるのもいい。渡り鳥が疲れた羽を休めるように、ここで一息つく。
乙淑島の中にあるドライブシアター隣には、乙淑島彫刻公園がある。子供たちが好きそうな作品が多く、彫刻と一緒に写真を撮る人も多い。太陽の光の中で散歩するのが好きなカップルが来る場所だ。当たり前だが写真を撮るのがデートの中心ではない。フェイスブックに恋人をタグして、写真をアップしてこそデートが完了する。写真さえうまく撮れば、帰り道でケンカしても幸せな時間だ。
2002年ワールドカップのときに完成した乙淑島文化会館。多少不便な場所にあるが、クラシック公演が頻繁に開かれている。貸館料が安いこともあり、市民が主催する色々な公演が度々行われる。公演がなければ立ち寄ることもないが、次のコースである乙淑島生態公園は必ず行くべき。釜山の他の公園は自転車を借りて直線コースをただ走るだけだが、ここではゆっくり自転車を走らせなければならない。というより、そうなってしまう。生態環境を守るためにつくられた、クネクネと曲がった8kmの土道をゆっくり回るコースだ。 1人乗り、2人乗り、4人乗り自転車がレンタルできるので、人数に合わせて選べる。
日暮れどき、再び展望台のある公園に行って、もう一回水辺の遊歩道を歩く。洛東江の向こうに沈む夕焼けは特に赤い。赤い空を見つめながら歩くこの道の名前は'夕焼け渡し道'という、なんとも言い得て妙。