東莱温泉の湯は格別だ。朝鮮時代、背中に腫れ物ができた王が湯治のために釜山まで来たというほどだ。そのときの様子を想像してみよう。でっぷりと太った王を担いで、付き人数百人が釜山まで来たのだ。腫れ物には硫黄温泉が最高に効いたという。今はいくつもの大きな銭湯や宿泊施設がある。地下から温泉をたっぷりくみ上げ、部屋に取り付けた家族風呂にも供給する。浴槽はたいていタイル製で大きく、家族一緒にゆったり温泉を楽しめる。色々な温泉施設の中から自分に合ったところを選べばいい。東莱温泉地区の温泉源はすべて同じ。数十万ウォンもする高い化粧水もボディローションも無用。東莱温泉に10分入っただけでも肌がツルツルする。温泉地区の真ん中にある交差点そばに、無料で露天足湯ができる場所まである。
温泉場から金剛公園へはそう遠くない。金剛公園の中には海洋自然史博物館がある。海洋自然史博物館では生きたワニも見ることができる。しかも室内で。ここは全国初、最大規模の海洋自然史専門博物館。25,000種の自然史資料があり、展示は子供たちの学習のためだけではない。人食い貝と呼ばれるオオシャコガイや、15日は山で生息するという魚、ピラニア、恐竜の肩の骨など驚きの海の生き物が見られるのでデートコースにもいい
金剛公園は、一時期釜山で一番大きな動物園と植物園、登山コースがあった。「今回の休日は金剛公園にでも行こう」は、昔のお父さんたちの特権だった。今は植物園と登山コースだけが残っている。金剛公園の登山コースは金井山まで続いていて、文化遺跡巡りを兼ねて休日を過ごすのにちょうど良い。金剛公園にはロープウェイもある。退屈している彼女に聞いてみて。「ハイキングに行こうか?」といっても気乗りしないだろう。でもこう聞くのであれば話は違う。「ロープウェイに乗らない?金井山を歩かなくてもロープウェイで頂上まで行けるんだよ」と言えば、誘いに乗るだろう。ロープウェイで好感度もアップ。
植物園で道を間違えると閉鎖された動物園に出くわす。独立映画監督がよく使う秘密の撮影地でもある。ゾウが体をこすりつけた干草の山や、マレーシアのツキノワグマの檻が壊れたまま捨てられている。オットセイがショーをしていた大きなプールは、きれいな水の代わりに落ち葉でいっぱいだ。ここは出入禁止区域なので入らないように、いや、入ってはダメ!好奇心に掻き立てられても出入禁止。もちろん止める人もいないが、ダメなものはダメ。
真夏に行っても金剛植物園は涼しい。植物園というだけあって、雑草や野花だけがあるわけではない。ここの植物園は大きな森のような感じだ。野外結婚式場もあり、レンタル料も安いので異色の結婚式を挙げることもできる。何よりも植物園の中はものすごくゆっくり時間が流れる。植物は千変万化ではないし、植物園は住宅街のど真ん中にある。小さな昆虫の鳴き声や木の葉がカサカサとこすれる音、竹林、そしてガラスの温室。イギリス式の紅茶がよく似合う場所だ。ここにある花や木の名前は知らなくとも2,300種類以上の植物を楽しめる。
禹長春記念館は軽く立ち寄って。禹長春路という道を行くと記念館に着く。育種学者の禹長春博士の業績は種の合成理論だ。種は違っても同じ属の植物を交配すると、まったく新しい植物ができることを証明した。日本の農業技術で生まれた種なしスイカを韓国で初めて実現させた人でもある。日本生まれで韓国語が上手くなかった彼を'禹長春博士帰国運動'までして韓国に呼び寄せた。彼は済州島で柑橘農業を提案したり、日本の白菜とキャベツを交配して韓国の白菜をつくり、一度植えて2度収穫できる米の品種を開発してこの世を去った。別名ブルドックと呼ばれるほど寡黙であったが、当時の政権に直言して出国禁止になったこともある学者だった。彼の生涯を紹介する記念館は興味深い。明成皇后殺害に加担した朝鮮人の息子として生涯軽蔑され、女手一つで彼を育ててくれた母親のおかげで東京帝国大学で博士号を取ったものの、帰ってきた韓国で良い待遇はおろか苦労の連続だった。柑橘農業技術とウイルスに強い江原道のジャガイモを開発し、時代を背負いながらも泰山のように寡黙に生きた禹長春の生涯を記念館で知ることができる。
金井山城でアヒル肉を味わってから金剛植物園‐海洋自然史博物館‐金剛公園‐禹長春記念館の順に回ってもいい。最後は温泉へ