萇山駅は2号線の終点だ。中洞駅と萇山駅はマンションが林立する住宅街なので、朝晩は都市鉄道の乗客が多く交通量も多い。'萇山'という駅名は、近くに萇山という山があるからだ。萇山には、とても古くから伝わる不思議な動物の説話がある。それが'萇山虎'なのだが、これといってつける名前がないのでそう呼ばれているだけで、口伝いによると、その姿はまったく虎のようではない。歴史書にもたまに載っている説話の中の動物を、70歳、80歳と年を重ねたお年よりで見たことがあると証言した人もいる。両手が長く、爪が長くて鋭く、顔は黒くて体全体に白い毛が生えているそうだ。そして、一瞬にして山の中に隠れてしまうほどすばしっこい。なので、萇山駅に降りたら萇山虎がどこかにいないかよく見てみよう。近づくと噛みつくという人もいるので、遠くから見るだけにするように。
萇山駅から30分くらい歩くと青沙浦の海に着く。海雲台はどこへ行っても海が見える。ビーチはもちろん、青沙浦、尾浦、松亭などそれぞれ違う顔をした海が楽しめる。その中でも青沙浦は静かな海辺で知られている。赤と白の二つの灯台が、まるでお菓子のCMに出てくるように向かい合っていて、どのアングルでも良い写真が撮れる。青沙浦はそれほどゴチャゴチャしていない。一つ一つの店がどっしり構えていて、海雲台ビーチとは違う面白さがある。美味しいものは色々あるが、ここでは貝焼きだ。
釜山の人にとって青沙浦と貝焼きはセットだ。「ねえ、貝焼きが食べたいな」「よし、それなら青沙浦に行こう」なんていう会話が自然だ。貝焼きが食べられるところは青沙浦だけではないのに、どういうわけか青沙浦と貝焼きは抜群に相性がいい。ここでは、今でも網を乾かして破れたところをつくろい、前の海で捕った魚を干す風景が見られる。フランチャイズのカフェもあるが、個性的な大型カフェも多い。青沙浦は漁村と街の二つの顔を持っていると言える。メラメラと燃える炭火の上に焼き網を置き、新鮮な貝を殻ごと焼く。薬味につけて食べると青沙浦の海を口の中で感じられる。
貝焼きを堪能した後、廃線になった東海南部線の線路をたどって歩く。列車の窓から海が望める路線だったので、海岸鉄道の好きな旅人がよく乗っていた。今はもう乗ることができないが、廃線区間はまた違う旅の役割をしっかり果たしている。敷き詰められた小石を踏みながら錆びた線路を歩く。線路はある人にとっては故郷へ続く道、またある人にとっては旅を思い起こさせる。
タルマジゴゲは、昔から裕福な人が暮らす町で知られていた。丘陵地には高級マンションやプール付きの家もあるほどだ。お抱え運転手がいそうな豪邸も多く、住宅街の道を歩くと目の保養になる。丘の下で一杯2,000ウォンのコーヒーも、丘の上だと海雲台の海の展望付きで5,000ウォン。20年ほど前でもカキ氷が一杯5,000ウォンもしたのに、観光客や休日を楽しむ釜山の人々が続々と訪れた。以前と街並みがずいぶん変わったが、今でもタルマジゴゲは海雲台を代表する場所の一つだ。丘を越えれば松亭の海へ行ける。中洞や萇山の住宅街から近いので、マンションの住人たちが景色を眺めながらブランチやコーヒーを楽しむのに絶好の場所だ。ゆるやかな丘なので、運動がてら毎日上り下りする人も多い。
タルマジゴゲは'月見峠'という意味。この丘の散策路は'ムーンテンロード'という名前がついている。昼は太陽の日差しを、夜は月明かりを浴びるという意味なのだろう。どこの国でも月の光は神秘的な力があると信じられている。慎重に足を踏み入れる。「願い事はなんだ?」頬をかすめる木の枝が暗闇の中でささやくかも。照りつける太陽の下を一緒に歩きたい人は?月明かりの下でひっそりと森を一緒に歩きたい人は?一歩一歩踏みしめるごとに、行きたい場所と会うべき誰かを思い浮かべるだろう。タルマジゴゲの月の光は誰かを呼び寄せてくれる。