1985年、都市鉄道というものが釜山にできた。1号線だった。テレビで都市鉄道開通のニュースが流れると、特に行くあてがなくても都市鉄道を乗りに行った。窓の外は何も見えず、ただ暗闇の中を走るだけなのに、都市鉄道は当時の人々にとって好きな交通手段であった。南浦洞から老圃洞までバスで2時間もかかる距離なのに、都市鉄道は切符さえ買えば車酔いもせずに1時間以内で着く。1999年に2号線が開通した。北区、沙下、亀浦から海雲台まで都市鉄道で行けるようになった。ミレニアムの1年前に、ようやく釜山市民は'乗り換え'という概念を身につけた。バスのように乗り換えて目的地に行くのに、その分の運賃を取らないなんて。2005年に3号線が開通した頃には、すでに当たり前になっていた。バスとの乗り継ぎも自由になり、一定時間内に都市鉄道とバスを乗り継いで交通費を節約できるようになった。そして2011年には全国初の無人軽電鉄の4号線が誕生し、また新しい体験をするようになった。RF-CBTC方式で運行する4号線には運転手や乗務員がいない。つまり運転室がなく、電車の前と後ろはガラス張りで外が丸見え。
安平に行く4号線の軽電鉄に乗ると、一般の列車にはない新鮮な気分を味わえる。無人システムで運行される列車の先頭に立つと、ジェットコースターの一番前の席のようにパノラマ風景が広がる。それだけではない。高架鉄道区間が多いので、列車の先頭で機張郡のあちこちの風景が楽しめる。YouTubeで検索すると'美南-安平の全区間HD映像'も出ている。画面でたいしたことないと思っても、4号線に一度乗ってみるべきだと思う。特に、先頭車両のガラス越しから見る夜の風景は最高だ。
寿安駅で下車すると、駅舎内に壬辰倭乱歴史館がある。文禄・慶長の役ときの東莱邑城での戦いの痕跡と遺物が展示されている。都市鉄道駅の中に歴史館があるとはユニークだ。歴史に興味があるならきっと気づくだろう。都市鉄道の工事で思いがけず遺物を発見したそうだ。寿安駅は東莱のちょうど真ん中にあるので当然とも言える。そのおかげで寿安駅は世界で唯一、博物館をもつ都市鉄道駅となった。わざわざ訪れる人もいるが、「あれ、こんなところに歴史館?」と驚いて立ち寄っていく人が多い。それに、寿安駅は入口の階段を降りるときから普通じゃない雰囲気だ。駅構内の所々に石を積んでつくったアーチがあるからだ。これは韓国の伝統的な石造技法の一つ。歴史館には発掘当時の現場の様子と東莱邑城の縮小模型がある。発掘現場は人骨の複製品まで再現されていて、ここで発掘された人骨は、銃や刀で切られた痕があるのが多かった説明がついている。歴史館の片隅には、朝鮮時代の武器体験スペースもある。風の強さを計算して日本の城を狙うコンピューターゲームだ。
安平駅は4号線の終点。車両基地と軽電鉄広報館がある。安平駅までの都市鉄道の旅を広報館で締めるのもいい。都市鉄道の発展史も展示されているので、都市鉄道ファンにはもってこい。他の国の軽電鉄(ライトレール)も紹介している。広報館のすぐ隣にはヒューメトロのテーマパークがあるので、ここを散歩するのもおすすめ。