センタムシティは眠らない。映画の殿堂、デザインセンター、BEXCO、市立美術館、世界最大規模のデパート、水営江を挟んだ公園と川沿いのサイクリングコース、釜山各地にある美味しい店の支店が集まるエリア。ここはセンタムシティ。
釜山市立美術館の現代美術作品の鑑賞からコースを始める。ちょっと照れくさい気もするが、とにかくペクスコ(市立美術館)駅で降りてみよう。5番出口すぐそばの美術館に入り、常設展示と特別展示を安い観覧料で見て回る。美術館のいたるところにボランティアがいて、館内の静けさが保たれている。観覧動線に沿ってゆっくり歩けば、各季節をテーマにした所蔵品からアラブ美術展、ビエンナーレ、プラトンをテーマにしたインスタレーション、近代画家たちの作品まで、様々な芸術作品が展示されている。短い旅であろうと、長い旅であろうと、こんなのんびりした時間は必要だ。
市立美術館の隣はBEXCO。展覧会やコンベンション会場として建てられたここは、一年中色々なイベントが開かれている。ホームページをチェックすると、コミックワールドのコスプレや医療機器の無料体験ができる健康博覧会の日程が出ている。せっかく行ってもイベントがなければ意味がないので事前に調べておこう。家具やベビー用品の展示会、ゲーム展示会、モーターショーが開かれるのもBEXCOだ。特に、ゲーム展示会の「G-STAR」は、朝早くからBEXCOを2周する行列ができるほど釜山と近郊地域のゲームファンが集まる。モーターショーは言うまでもない。
BEXCOの左側にある二つのデパートを過ぎると、巨大な屋根をのせた建物が目の前に現われる。映画の殿堂だと知らない人は、近くを通り過ぎて「これは何だろう?」と思うだろう。難しい名前のオーストリア人の建築家がデザインした。建物前の広場から内部まで「フォトスポット」の表示があるので、一番良いアングルで写真を撮ることができる。意外にも釜山の人はあまり訪れないが、映画ファンは1年に100万ウォンも払って会員待遇で映画を楽しむ。映画や映像関連の教育を受ける受講生や映画製作スタッフもここにいる。映画の殿堂近くで、徹夜作業や課題でやつれた顔で力なく歩く人がいたら、まず映画関係者と思っていい。
封切り映画だけでなく特別展も上映されている。料金は大型シネマコンプレックスより安く、最高の音響と画面で鑑賞できる。BIFF(釜山国際映画祭)はここで始まりここで終わる。本来はBIFF専用の建物だった。
夏の時期はなんと野外シアターで無料映画も上映する。その辺にある小規模の映画試写会とはわけがちがう。さすが映画の殿堂。想像以上、期待以上だ。
いよいよ最後のコース、APECナル公園へ。水営江という川に沿って造られた公園なので、サイクリングコースとして楽しむ人が多い。サイクリングコースと散策路を合わせると3,500m。釜山で車に脅かされずに自転車に乗れる場所は滅多にない。センタムシティ内の企業に勤めるサラリーマンやランチを静かに楽しみたい人がお弁当をもって公園を訪れる。一人でさびしそうだと見る人もいるが、この公園なら結構さまになる。ボート乗り場もあり、自転車マニアが多く出没する所でもある。お金をかけて改造した自転車を自慢そうに互いに競い合う。素人が見ても普通の自転車じゃないとわかる。水営江は水質が良く、近くに工場地帯がないので空気が澄んでいる。自転車がない人は左水営橋の下に行けば、無料レンタサイクル所があるのでそこで借りればいい。
飲食店やコンビニがあちこちにあるので、何を食べるかは心配無用。美味しい物を食べて、映画を観て、自転車に乗って、思う存分心地よい時間を過ごす。ペクスコ(市立美術館)駅から始めた都市鉄道の旅コースの終わりはセンタムシティ駅。エスカレーターで地下に行くこともできるが、二つあるデパートはどちらも都市鉄道の駅と直結している。1階のブランド品売場をウインドーショッピングして、デパ地下のシーズンオフワゴンセールに立ち寄ってから地下鉄に乗ればいい。ただし、彼女と一緒のときはデパートに立ち寄らないこと。「すてき」と心躍らせる彼女に相槌しても、「買ってあげようか?」とは訊かないこと。むしろ「僕も欲しい」と言ってうまくかわすのが妙手。