海のすぐそばにカフェと居酒屋が立ち並ぶ。比較的手頃な料金で海の展望がきれいな宿に泊まることができる。相場に見合った値段で買った刺身を指定食堂で食べることができる。娯楽を楽しむ費用は海雲台よりも少なくてすみ、住宅街の静かな道の先に海が広がる。ここは広安里。
ビーチで靴の砂をはたいて二車線道路を渡れば、お酒や美味しい料理にありつける。2~3坪足らずの小さな店から大型のフランチャイズまで色々だ。個性的なカフェもたくさんあり、思いのままに選べるところはそう多くない。ビーチ沿いにレストランやカフェが連なる広安里は、今も昔もユニークな場所。
広安駅で降りると住宅街に囲まれる。広安駅からビーチまで10分ほどの距離なのに「広安里ビーチはどこですか?」と尋ねる観光客をよく見かける。都市鉄道駅の出口で海が見えないからと慌てないこと。広安駅の出口から見える山と反対側の道路をたどって少しだけ歩くと嘘のように海が現れる。
釜山の人たちは夜中まで飲んだり踊ったりした後に、タクシーで広安里に来ることも珍しくない。花の金曜日を海で締めくくるとは何とも豪快。それに広安里には、二日酔いに効くモヤシスープご飯を出す24時間営業の店もある。驚いたことにこの店では、無料でバレットパーキング(駐車代行)サービスまでしてくれる。これまでバレットの意味を知らなかったドライバーたちも、運転手に車のキーを預けて店に入ることを覚えた。車は食事を終えるまで専用駐車場で保管される。
広安里に行く日が週末の夜なら、海をバックに音楽公演を楽しめる。週末の夜の街頭公演は広安里が最高だ。ヒップホッパー、バンド、演奏者、タンゴ、ダンサー、フォークギター歌手まで、海辺で適当にアンプをつけて公演を披露する。もちろんチケットを買う必要もなく、演奏者を囲んで座れば舞台と観客が成立する。歌がよければCDを買うことで公演代にすればいい。そんな素朴なインディーミュージシャンの舞台が広安里だ。背景には静かな夜の海がある。ビーチの端から端までゆっくり歩きさえすれば、色々な時代の音楽が代わる代わる聴こえてくる。80年代のフォークギター、ラップ、モダンロック、アコースティックギター、たまにウクレレまで登場する。
広安里ビーチ端にある民楽刺身センターなどの食堂でもいいが、刺身を買って水辺公園で座って食べるのもおつなものだ。民楽水辺公園は、ブロックが敷き詰められた波打ち際にある珍しい公園。熱帯夜のときは大勢の人がここへ涼みに来たり、つまみと缶ビールを片手に酒盛りをする人も少なくない。公園の真ん中には人よりも大きな岩がある。説明書きによると、2003年の台風で波に運ばれてきた海の中の岩だとか。
広安里の徒歩旅行は簡単だ。広安駅で降りて海辺を歩き、金蓮山駅で都市鉄道に乗るか、反対方向に歩けばいい。金蓮山駅そばには市場があり、旬の果物をいくつか買って食べながら歩くこともできる。ペット連れの人にもこのコースはぴったりだ。広安里を定期的に散歩する愛犬家たちには、彼らなりのマナーがあり、ペットの紐を外したり気性の荒い犬を放置することはめったにない。