ラフでキュートなウェアを着る。夏は短パンとTシャツがいい。よれよれのウェアなんかはやめたほうがいい。元彼にばったり会いでもしたらばつが悪いから。日焼け止めクリームをしっかり塗る。ヘアバンドで髪をまとめ、スニーカーを履いて。アームバンドをつけてスマートフォンを装着、耳にはイヤホンを。サングラスをして軽くストレッチをしたら、さあ走ろう。そう早くないスピードで、正確なフォームで。パワーウォーキングもいいけれど、両手を激しく前後させる動作はちょっと恥ずかしい気がする。慣れた足取りで気持ち良くアスファルトを蹴る。青い波の白い泡がマイアミの海のよう。一度も行ってみたことはないけれど…。
ここは海雲台。ジョギングの定番コース。2002年のワールドカップのときは、リオン、クーペ、ジダンがここで朝のランニングをした。もちろん誰も彼らだとは気づかなかった。今でも2002年のあの日の朝、選手を目撃した人は海雲台で在韓米軍が朝の訓練をしていたと思っているだろう。
夏の海雲台ビーチは言葉通り人波。夏の海雲台で、地元釜山の人を見つけるのは難しい。釜山の人は静かな渓谷や日光、大辺、鎮下など人の少ない海辺を訪れるからだ。それでも海雲台は釜山を代表する海であるだけに、観光客が集まるのは間違いない。夏休みの時期は、休日であれ平日であれ避暑客でいっぱいだ。国籍も様々で、ざっと見渡しても6~7カ国の人々で賑わっている。外国人でも韓国人でもチキンにビールを好むのは同じで、夜であろうと昼であろうとチキンとビールのデリバリーが忙しい。電話一本でビーチパラソルまで出来立てのチキンと冷たいビールが届く有難いサービス。
海でひと泳ぎした後や泳ぎが苦手な人々は、ビーチのずっと右に足を進める。松林を抜けると、冬柏島へと続く散策路が出てくる。冬柏島は元々椿や松がうっそうと生えた島だったが、長い歳月をかけて砂の堆積作用で陸地になった。ウォーキングコースのカルメッキルの一部でもある散策路は、島をぐるっと一周する舗装道路。木製デッキの散策路もある。冬柏島の醍醐味は2005年APEC首脳会議で使用されたヌリマルハウス。ハウスの中に入ると当時の会議場を見て回ることができる。歴代のAPEC首脳会議で一番景色が素晴らしいと賞賛された。それはそうだ、海雲台だから。
ビーチの左端、冬柏島反対側にはアクアリウムがある。SEA LIFE アクアリウムとして2014年にリニューアルした。夏休みと休日は子連れの客で賑わい、「ママ、あれは何の魚?」という声を100回ぐらいは耳にするだろう。けれども、アクアリウムの本当の楽しさは平日の月曜日から金曜日、観覧客が少ない昼間。暗くて静かな水槽を順番に見て回り、3,000トンのサメ用プールの前まで着たら、鋭い歯のサメが泳ぐ姿を存分に見ることができる。年間フリーパスが比較的安く、この時間に瞑想でもしているかにみえる年間会員らしき人がいる。彼らはアクアリウムに一人で来る。鞄を横において椅子に座り、5mの水槽をじっと見つめる。海の中は時間が流れず、夜も昼もない。水中の魚たちは観覧客など見えていないかのようにゆっくり、ときには速く思い思いに泳ぐ。海の断面を切って見せてくれているかのように、ガラス越しに人々は海底を垣間見る。遥か昔、人間のDNAも海で生まれたのかもしれない。
海水浴と水族館で冷えた体は、温かい温泉で癒す。海雲台は海水浴と温泉を楽しめる韓国唯一の臨海温泉地だ。海の近くに海雲台温泉センターがあり、海の温泉につかって今日一日を振り返ろう。海辺の散歩、海水浴、島にも行ったし、アクアリウムにも。一日では足りないほどのスケジュールを一カ所で堪能できた。今夜はよく眠れそうだ。